ごあいさつ

 今回、私共バンタン映画映像学院在学生が自主上映会を企画致しました意図は、メジャー系映画公開が多い中、観る機会の減少している他国の映画を再上映し、改めてその作品や、映画というものの価値を広めたいという所にあります。私達は映画業界を目指す学生として映画をただのエンターテイメントではなく、文化の一つとして捉えて欲しいと考えております。
 特に若い世代の方に、観る機会のあまりない良作の上映をきっかけに、国や文化の違いなどの壁を超え、映画自体により興味を持っていただきたい。そうして今後の映画人口を増やすことも上映会の目的のひとつです。私共はこういった目的を浸透させていくことを目指し、今後も定期的に上映会活動を続けていくつもりであります。

フランスアニメーション界 伝説の鬼才、ここに現る!

 迷路に迷い込んだ様な夢の世界。それなのに目覚めたくないと願ってしまうのはなぜ?
 フランスの鬼才と謳われたルネ・ラルーが創造したのはシュールかつ幻想的な、奇妙で素晴らしい世界。時を超えて現代の社会をも風刺しているような普遍性は、文明に対する警告か。はたまた、人間に対する希望なのか。
 アニメーションとしては世界で初めて、『ファンタスティック・プラネット』で1973年カンヌ国際映画祭の審査員特別賞を受賞した監督ルネ・ラルーは、長編作品3本きりという寡作のアニメーション作家。その高い芸術性ゆえ宮崎駿監督などの日本のアニメーターにファンも多い。
 そんなルネ・ラルー監督の貴重な3作品を今回、一日限りで一挙上映する。バンタン映画映像学院上映会プロジェクトの記念すべき初企画。
 世界には、こんなにも心揺さぶる映画が溢れている!今、その一片を贈りたい。

ご賛同いただいた方々からの声

りんたろう(アニメーション映画監督/『メトロポリス』『銀河鉄道999』)
フランスアニメーションの先駆けとして登場した記念すべきルネ・ラルー監督作品を自主上映されることの意義は実に大きいと思います。企画者に拍手を!

杉井ギサブロー(アニメーション映画監督/『銀河鉄道の夜』『あらしのよるに』)
今、アニメーション界の映画が変革期を迎え、若者の創る映画が新しい市場を獲得しつつある。そしてテレビ主体だった「アニメファン」が映画主体の「アニメーションファン」に移行している現在、特異な作風のルネ・ラルー監督の特集上映は創作の世界を広げる役割を果たすだろう。

大竹久美子(バンタン映画映像学院講師・映画宣伝)
ルネ・ラルーの世界には、時間軸を超えた生命の美しさとその業までもを孕んでいる。そこでの命はエロスであり、自然は感情の放流となる。原初にあるすべてを私たちは目にすることができるだろう。ルネ・ラルーという存在に未来を見いだした学生たちの輝かしき可能性に拍手を贈りたい。

ルネ・ラルー René Laloux とは

 フランスのアニメーション映画監督。1929年、パリ生まれ。2004年にアングレーム市にて心不全のため逝去。
 デッサン、絵画、彫刻などに打ち込んだ後、兵役を経て、再び絵画の世界に。空想絵画の展覧会をパリ、ブリュッセルで開く。友人の紹介で、精神学者のフェリックス・ガタリ率いる精神科病院で職を得、1955年から4年間絵画や中国影絵、演劇などの教室を開き、患者の指導にあたる。その患者たちと共に制作した切り紙作品で初のアニメーション短編『猿の牙』を作る。
 やがてアニメーション映画監督の道に入り、シュールレアリズムとブラック・ユーモアの画家ローラン・トポールとコンビを組み、3本の作品を制作。そしてその中で初の劇場用長編『ファンタスティック・プラネット』が1973年カンヌ国際映画祭でアニメーションとしては初の審査員特別賞を受賞する。日本でも、1980年に自主上映会で上映された。そこには宮崎駿氏も参加しており、「日本のアニメには美術が不在だ」というコメントを残している。
 1980年代には2本の長編を制作。一つ目はフランス漫画界の巨匠、メビウスと組んで、3年の歳月をかけハンガリーで制作された長編『時の支配者』。もう一つは、同じく漫画家のフィリップ・カザと組んで、北朝鮮のスタジオで制作され『ガンダーラ』。同年、同じ制作体制で作られた短編『ワン・フォは如何にして救われたか』が最後の監督作品となった。
 晩年では、若い頃より描き続けてきた絵画が主な創作活動になっていたが、近年では、新作のアニメーション長編の準備を進めていたという。


<<フィルモグラフィ>>

1960年 『猿の牙』監督(les Dents du singe)
1964年 『小クロースと大クロース』出演(le Petit Claus et le Grand Claus)
    『死んだ時間』監督(les Temps morts)
1965年 『かたつむり』監督(les Escargots)クラクフ映画祭審査員特別賞
                    プラド・ファンタスティック映画祭グランプリ
                    トリエス・テファンタスティック映画祭グランプリ
1973年  『ファンタスティック・プラネット』監督(la Planète sauvage)
                    1973年 カンヌ国際映画祭 審査員特別賞受賞
1982年 『時の支配者』監督(les Maîtres du temps)
1987年 『ガンダーラ』監督(Gandahar)
    『ワン・フォは如何にして救われたか』監督(Comment Wang-Fô fut sauvé)
1990年 中盤 アニメ―ション監督引退を宣言
1999年 『狼の眼』(l'Oeil du loup)脚本

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